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森章太郎が手がけた児童書『あしたのあさは星の上』、50年のときを越えて復刻!

太陽爆発という「世界の終わり」に直面した地球を舞台にした、黒人の “チョコレートじいや” と白人の “ぼうや” による人種の壁を超えた “絆” の物語。
自然破壊、人種差別などの社会問題をモチーフに取り上げながらも、石森らしいSF物語としてメッセージを込めて描かれています。歳月を経てなお、読み継いでいただきたいお話です。

■担当編集より
私がこの児童書を知ったのは、今はもう存在しない出版社の目録からでした。1977年発行とあり、初版は1967年とあります。ということは? この本は一度復刻をしているらしい。私が知ったのは復刻版ということになります。1976年生まれの私は当然読んだことはなく、石森先生の児童書? と半信半疑で高額な値がついている古書店から復刻版を取り寄せました(復刻といっても40年前のものですが)。最初の読後感は、「これは、とんでもない本を見つけてしまったかも知れない」というものでした。

ほとんどの方が未読だと思うので、簡単に概要を紹介いたします。物語の舞台はアメリカ南部の架空の都市。時代背景はおそらく、石森先生が執筆された1967年ごろだと思います。黒人農夫の「チョコレートじいや」と、主人の息子である「白人のぼうや」との交流を軸に、人種差別問題や東西冷戦、原子力などの社会問題への警笛を散りばめながら、太陽の爆発による地球滅亡の危機を、UFOや宇宙人との交流を通して描いています。

編集担当として復刻したいと強く感じる決め手となったのは、この現代にも通じる社会問題を取り上げているころ、とくに人種差別の問題に対してまっすぐに取り組んでおられると感じたからです。この本は、いわゆる「児童文学」というジャンルに入ります(当時は、この類の少年・少女向けのSFジャンルを、「ジュブナイル」と呼んだようです)。子ども向けの本では、絵本も含めて人種差別問題を扱った作品は多く、海外の翻訳本が日本では有名です。やはりデリケートな問題だからではないでしょうか、逆に、日本の作家がこの問題について、意識的に取り上げる例というのは、あまり多くないのでは、と感じています。そんな中、石森先生は本書で、「黒人のチョコレートじいや」や「地球を救いに来た宇宙人」の言葉を借りて、「形や色で心まで判断してはいけない。相手から見たら自分もそうなのだ」というメッセージを幾度となく発信していきます。まるで、現代を予見していたかのようです。

余談ですが、私にはこの「あしたのあさは星の上」に登場する「白人のぼうや」と同じくらいの息子がいます。

親としての立場はもちろん、石森先生の「多様性を尊重する」というメッセージは、家族から国家、宇宙規模にまでつながる、とても大事な姿勢なのではないでしょうか。「チョコレートじいや」が「ぼうや」を大事に想う気持ちは、まさに「多様性の尊重」であり、それは親子にも通じる本質的なことだよな、と、子どもと触れ合うたびに考えます。
長々と書いてきましたが、とにもかくにも、あらゆる意味で、今、タイムリーな本だと思うのです。

P-VINE / ele-king books
樋口聡

■書籍概要
『あしたのあさは星の上』
ぶん・え 石森章太郎
B5変形(202ミリ×180ミリ)/ハードカバー/オールカラー/128ページ/3,200円+税
ISBN978-4-907276-71-3
P-VINE/ele-king books

■発売日
2017年3月17日(火)

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