富士通BSC広告企画の紹介

サイボーグ009」の面々は、富士通ビー・エス・シーの広告塔として近年活躍しています。2013年から実施され、以来、日本産業広告賞、ビジネス広告大賞等で何度も受賞を果たしました。作品やキャラクターの発信するメッセージが企業メッセージとつながった事例として、イラスト制作に携わった田嶋秀樹(石森プロ)のコメントとともにご紹介いたします。

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石森

富士通ビー・エス・シー向けのイラストは、どういった依頼内容で描くことになったのでしょうか。

田嶋

原作タッチで、とリクエストを受けました。ポージングに関しても大まかな指定がありました。全員立ちポーズということだったので、目立って激しいポーズをとっているキャラクターはいませんね。今回はデザインワークとしてイラスト制作を行いましたし、構図やポーズに関しても比較的明確なリクエストをいただいていたので、こちらからのイメージ提案を行うよりは、その意向に沿えるよう意識しました。ただ原作タッチで、といっても当然石ノ森先生本人ではないので、全く同じタッチで描くことはできません。主旨を汲みとりつつ、自分が解釈する原作版009のタッチで描きました。

石森

一番描きづらかった(難しかった)キャラクターは?

田嶋

……その質問が難しいですね。全部難しいですよ(笑)。まぁ誰が描いてもそう“離れない”、いわば一番記号化されているのは、006:張々湖。逆に、描く人によって全然変わるのが003:フランソワーズ・アルヌール。そういった観点でいうとフランソワーズかな。そもそも石ノ森先生の絵も、連載期間によって全然顔も違います。過去のアニメ作品ごとにも、もちろん違うし。おそらくファンの皆さんの頭の中でも「自分にとってのフランソワーズ」は、それぞれ違っているんじゃないでしょうか。みんな違う理想やイメージを持っていると思うので、そもそも「正解」はすごく難しい・・・。だから、今回のイラストがいいって言ってくれる人もいれば、これはジョーとかフランソワーズのイメージと違う、と言う人も当然いる。そういった方には「スミマセン」としか言えないですし、僕自身も「これがベスト」とは思っていません。でもこのイラストを、富士通ビー・エス・シーさんが「良い」と言ってくれたので、自分としてはクライアントに対して応えられたつもりです。まだまだ技量不足は否めない、と思っていますが……。難しいです、「石ノ森先生の絵」は。

石森

ちなみに一番好きなキャラクターは?

田嶋

004:アルベルト・ハインリヒ。(石森プロ入社前に)2001年放送のTVアニメシリーズを制作していたときに、思い入れを込めてつくったキャラクターだから、という点もあると思います。原作マンガでは、初期の004はかなり若かったと思いますが、2001年版アニメの際は、ジョーやジェットを見守るお兄さんという感じで年齢設定も上げました。マンガでいうと後期に近いイメージですね。ヒルダという亡くなった恋人のことを胸に大事にしまいながら、口数少なく、漢(おとこ)な感じ。実際、男性人気は一番高いんじゃないかな? ハードボイルドな感じで。

 

石森

この広告シリーズは、実施以来、度々、広告賞も受賞しています。

田嶋

“絵”に対して賞をいただいているわけではないですから、広告を制作されている皆様の功績と思います。自分の絵がその助力になったならば嬉しいです。僕はパーツを作っただけで、それを基に構成している方々がいるのですから。ただ、もし次があったら、今度はできれば「どういった完成形にしたいのか」という構図やイメージから詳しく伺ってみたいと思いますね。その上でどういった絵がハマるかということを考えられると、さらにもう一段階上に行けるかなと。自分は“作家”ではありませんし、組織に属しているチームの一員ですから。俺が俺が、ではダメなんですよ。会社である以上、受注者・発注者が求めるものには応えることが重要だし、「自分はこう思う」と我を通すことよりも「相手を喜ばせる」「相手が望むものに応える」ことを大事にすべきと思っています。好きなようにやっていい、と言ってもらえればもちろんそうしますが、相手に「こういう方向性にもっていきたい」という希望があれば、まずそのリクエストに報いることが最重要なんです。僕は、人と仕事をする・・・・・・人に喜んでもらえることが、一番好きなので。