石ノ森章太郎コレクション

筑摩書房ちくま文庫から、「石ノ森章太郎コレクション」と題した短編集として、
「初期少女マンガ傑作選 」と「ファンタジー傑作選」の二冊が発売されています。

全三巻の予定で、近々「SF傑作選」が発売予定です。

少年マンガや青年マンガに多くの作品を残した石ノ森だが、デビューからしばらくは少女マンガ誌が主な活躍の場所であった。その頃に描かれたファンタジーやSFの要素を先鋭的に取り入れた短編作品は、当時の読者に強い印象を残し、その後デビューした多くの作家たちが影響を受けたと証言している。24年組と呼ばれる事になる少女マンガ家たちはもちろん、例えば後にアシスタントを務めた永井豪も、石ノ森の仕事場で「きりとばらとほしと」の原稿を見て感激したと語るくらい、マンガ界に大きな衝撃を残したのだった。

 中でも名作と呼ばれる「龍神沼」は、石ノ森が書いた「マンガ家入門」で自ら詳細に構造を解説したこともあって現在でも容易に読む事は出来るが、その他の名作短編はなかなか簡単に手に取る事が難しい。そもそもマンガの短編は、長編作品と違って復刻される事もあまりなく、さらに多作な作家は単行本が多く発刊されていてもなかなかまとめて読む機会が少ない。

 そこで石ノ森章太郎を語る上でぜひとも読み継がれていって欲しい「初期少女マンガ」「ファンタジー」「SF」という三つのキーワードを元にセレクトしたのが今回の「石ノ森章太郎コレクション」だ。石ノ森はセレクトされた作品集も数多く存在するので、今回はいわゆる“名作”というくくりをまず忘れ、今の視点で石ノ森の短編にあまり触れた事のない読者を意識したセレクトを試みた。

 「初期少女マンガ傑作選」の収録作品は「青い月の夜」「きのうはこない だがあすもまた…」「龍神沼」「夜は千の目をもっている」「きりとばらとほしと」「あかんべえ天使」「MYフレンド」の7作品で、解説は中条省平が担当。

 「ファンタジー傑作選」は「かげろう」「ごいっしょに白鳥のみずうみをききません?」「雪おんな」「そして…だれもいなくなった」「永遠の女王 ヒミコ」「びいどろの時」「うしろの正面だあれ」「ヒュプノス」の8作品で、解説を竹宮惠子が担当している。

 そして8月中旬には「SF傑作選」が発売予定。解説の担当は、すがやみつるだ。

 石ノ森の本領は短編作品にこそ発揮される。「サイボーグ009」や「佐武と市捕物控」「HOTEL」など、長期連載の大ヒット作品も短編構成の積み重ねによって大きな物語が描かれる事が多い。その原点ともいうべき短編コレクションにぜひこの機会に触れてみて欲しい。

(文:今 秀生)

『石ノ森章太郎コレクション 初期少女マンガ傑作選』(文庫判)

発売日:2021年1月9日
価 格:800円+税
発 行:筑摩書房

【収録作品】
青い月の夜」「きのうはもうこない だが あすもまた…」「龍神沼」「夜は千の目をもっている」「きりとばらとほしと」「あかんべぇ天使」「MYフレンド」

https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480437235/

『石ノ森章太郎コレクション ファンタジー傑作選』(文庫判)

刊行日:2021 年 5 月 10日
価 格:800円+税
発 行:筑摩書房

【収録作品】
「かげろう」「ごいっしょに白鳥のみずうみをききません?」「雪おんな」「そして…だれもいなくなった」「永遠の女王ヒミコ」「びいどろの時」「うしろの正面だあれ」「ヒュプノス」

https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480437266/