マンガ家:木村明広(Akihiro Kimura)
1970年生まれ。パソコンゲーム『サバッシュ』のキャラクターデザインでメジャーデビュー。『エメラルドドラゴン』の大ヒットで人気イラストレーターに。マンガ家としても数多くの作品を手がけ、2018年3月30日『CYBORG 009 CALL OF JUSTICE』のコミカライズ版がKADOKAWAファミ通クリアコミックスから上下巻同時に発売された。
1970年生まれ。パソコンゲーム『サバッシュ』のキャラクターデザインでメジャーデビュー。『エメラルドドラゴン』の大ヒットで人気イラストレーターに。マンガ家としても数多くの作品を手がけ、2018年3月30日『CYBORG 009 CALL OF JUSTICE』のコミカライズ版がKADOKAWAファミ通クリアコミックスから上下巻同時に発売された。
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まずは『CYBORG 009 CALL OF JUSTICE』コミカライズ版の単行本上下巻同時発売開始、おめでとうございます。
木村:
ありがとうございます。
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手応えはいかがですか?
木村:
それはもうありすぎで!戦闘服の描き方に慣れるまで5話分はかかりましたから(笑)。
そこですか(笑)。でも、たしかにこの『CYBORG 009 CALL OF JUSTICE』の戦闘服はちょっと複雑なデザインですよね。
木村:
もともとの映像作品は3DCGですから、そっちは一度モデリングしたら自由自在に動かせるけど、マンガはひとコマひとコマ描かなきゃいけないでしょ。まずは自分の頭にデザインを叩き込んで、動きに合わせてバランスを取らなくちゃいけない。ついに最終話まで心から納得いく感じでは描けませんでしたね。
それは本当にお疲れさまでした!
木村:
いえいえ。でも憧れの石ノ森章太郎先生の、それも『009』を描けたわけですから、もう本当にハッピーなことでした。
そもそもコミカライズを手がけられることになったきっかけは何だったのですか?
木村:
なんでしょうね? たまたま手を上げて、じゃキミ、みたいな感じで。
(担当:いやいや木村さんの『009』好きはKADOKAWA社内でもよく知られていましたから、まさに適任!という感じで)
しかし、昔から大好きだった『009』を今になって手がけられるなんてことがあるんだ!って驚きましたね。じつは…25年ほど前、手がけたゲームが当たったころ画集を出したんですが、そこにも、ほら、『009』を描いているんですよ。
あ!ほんとだ!25年前なんて四半世紀ですよ!?
木村:
そうなんです。25年前の片思いが、まさか、いま、実現するとは!
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しかし、それほど思いが強かったら、プレッシャーも相当だったのでは?
木村:
でも、そもそも映像があってのコミカライズなので、責任も半分ずつだな、と(笑)。
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楽しかったところは?
木村:
003をたくさん描けたことですねー。彼女を描いてるときはシアワセでした(笑)。
逆にツラかったところは?
木村:
また戦闘服のグチみたいになっちゃいますが(苦笑)、あの複雑なかたちで、しかもアクションシーンが多いのが『009』という物語ですからね。中でも、とにかく「加速」の演出。マンガは映像のように動くわけではないので、どのように尋常じゃないスピード感を出すのか。で、「消える」という演出にしたわけです。
今回の『CYBORG 009 CALL OF JUSTICE』は、やはり「加速」が大きなテーマになっています。上巻の終わりから下巻の始めにかけての問題のシーン。これはかなり衝撃的でした。そして、それを受けての終盤、カタリーナが「ジョー、お前はもっと速く動けるはずだ」というようなことを言いますね。
木村:
あれは困りましたね(笑)。とにかくラストに向かってページ数の制限もあって、結構苦労しました。
後半はとくに「動」と「静」のメリハリが効いてて、すごくドラマチックです。
木村:
「静」を見せるのはマンガはわりと得意なんです。たとえば白いコマに言葉をひとつ添えると「静」になります。けれど「動」の演出は映像にはなかなかかなわない。
「静」といえば、上巻のラスト、あれも完全に時が止まっている。だから衝撃が増しています。
木村:
あのシーンは、もうひとつ、衝撃を演出するためにあえて2人を私服にしました。映像作品では戦闘服のままなんですが、それだとなかなかショックを表現できない。
たしかに「普通の人間」を着ている服で表現しているからこそ、衝撃が倍増されていますね。そしていよいよラストというところでの重要なシーンとして、カタリーナの…ネタバレになるので伏せておきますが…。
木村:
彼女は敵になったり味方になったりと立場が変わるキャラで、しかも基本的に表情がないから感情が描きにくいんですね。だから雰囲気で見せるしかなくて、だけど最後にようやく感情を見せて。
それが切ないんですよね。
木村:
あのシーンはもう少しページを割きたかったんですけどね。敵が味方に、というのは、石ノ森イズムというか、大切なエッセンスの部分ですから。
『CYBORG 009 CALL OF JUSTICE』では重要な役どころの魅力的な女性キャラが3人も出てきますね。フランソワーズに、カタリーナ、そしてルーシー。フィギュアつくったら売れそうです(笑)。
木村:
木村:そういった登場人物たちの関係をあれこれ想像…いや妄想してSNSも大いに盛り上がってました(笑)。
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見どころ満載の『CYBORG 009 CALL OF JUSTICE』ですが、コミカライズ版のイチオシは?
木村:
単行本でしか読めない描きおろしのエピローグです(笑)。いや、でもこれはわりと本気で、やはりゼロゼロナンバーサイボーグたちは誰一人欠けてはならないと思うんですよ。それが前提。やはり、これからも続いていくべき物語なので、前に向くイメージを残したかったんです。
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では、木村先生が次の『009』を描くとしたらどんな物語を?
木村:
そうですね…。今回、イワンと肩を並べるほどの能力者を倒してしまったわけですから、もしかしたら次は自分たちと戦うしかないのかもしれませんね。最強の敵は自分たち、と。
なるほどー。それはどう2つに分かれるかでモメそうだ(笑)。ところで木村先生は石ノ森章太郎という作家からどんな影響を受けましたか?
木村:
私たち世代の絵を描く人間で影響を受けてない人はいないくらいの人ですからね。ヒーロー、それも背中にいろんなものを背負っているヒーロー。単なる勧善懲悪じゃなく、ヒーロー自身も負い目がある。そんなスタイルを築いたのが石ノ森先生です。私も石ノ森イズムにしびれて、ここに至っています。私だけでなく、いまやすべてのマンガの根底に流れているんじゃないでしょうかね。
『009』以外に手がけてみたい石ノ森作品はありますか?
木村:
特撮ですけど『アクマイザー3』ですね。あれを今の時代で表現したら…いや、幕末とかでも面白いかもしれません。なにしろ剣を持ってますから(笑)。ほかにも石ノ森先生には今でも通用する作品がたくさんありますよね。『キカイダー』『変身忍者嵐』…『ロボット刑事』なんてのちにハリウッドでよく似た作品がつくられましたが、設定や世界観がしっかりしているので、まだまだ世に問えるのになぁ、と思うことがあります。
それでは、ぜひ次もお願いします!
木村:
はい。ではKADOKAWAさん、描く場を用意してください!(笑)