石ノ森が描いた「テクノロジー」

AIやディープラーニング、次世代通信規格5Gなど、21世紀に入ってからも加速度的な進化を続ける「テクノロジー」。

石ノ森章太郎は昭和の時代から未来を見据えるかのようにサイボーグやロボット、また設定の中にもテクノロジーが垣間見える作品を数多く発表してきました。そこで描かれた世界に、現実はどれほど近づいているのか。

今回は、そんな観点で作品をご紹介してみます。

仮面ライダー

本郷猛はショッカーによって脳以外を改造された改造人間。ショッカーは人間を改造する際に実在の動物や昆虫の特徴をトレースする事で、改造人間に個体差をつけるのですが、本郷猛の場合はバッタでした。バッタの跳躍力を人間のサイズで実現させるため、全身が強化され、そのジャンプから生み出されるキックは超人的なパワーを発揮しました。人間以上の高い跳躍力を表現したのがこの3コマです。

動物や昆虫が持っている体の構造や能力を先端技術に活用する研究は、昨今すでに多く行われていますが、「ヒーローをパワーアップさせるために、昆虫の能力を交ぜ合わせた施術を行う」という発想も、そこに通じると言えるかもしれません。異形の者として描かれた仮面ライダーも、テクノロジーの申し子なのです。

人造人間キカイダー

人間により一から作られたロボット、キカイダー。一番の特徴は、悪の組織に利用されないように組み込まれた「良心回路(ただし不完全)」でした。良心回路があることで、キカイダーは単なる従順なロボットとは異なる存在となり、善悪の狭間で悩むことにもなりました。

良心回路を、人間の脳に置き換えて考えてみると、感情を処理したり衝動を抑制したり意志を決定する、扁桃体や眼窩前頭皮質にあたるのかもしれません。心といったあいまいなものではなく、「善悪を判断する器官」があると明確に提示する考え方は、AIの時代を迎える今だからこそ、身近に感じられるのではないでしょうか。

がんばれ!!ロボコン

日常生活の中で様々なお手伝い(サポート)をする働き者。そのコンセプトは、今まさに様々なタイプのロボットやAIにより実現しています。テキパキ動き回って掃除をし、自ら充電に接続するルンバの姿は、どこかロボコンにも通じるかも? 努力と根性で日々成長する、そんなロボットの姿も見られる日が近い気がします。

ロボット刑事

警視庁が開発した犯罪捜査用ロボットのK。彼は鋼のボディと限りなく人間の脳に近い働きをするCPUを搭載し、刑事として働いています。高い知性はもちろん、非常に豊かな感情を持ち、時には詩まで書いたりもします。

人工知能が進化したときに人間社会とどう関わっていくのか、人間は対応できるのかというテーマは現代でも多く語られていますが、刑事という人の生き死にに深く関わる仕事に就かせることで、人工知能の苦悩という領域を描いている点が、石ノ森らしい作品です。

宇宙鉄人キョーダイン

人間の人格がコピーされたサイバロイドという設定は、「人間の代わりに機械が戦う」と言われた21世紀の戦争を予見しているかのようです。

マンガのクライマックスでは、突如東京に超巨大なロボットが現れ、人々はパニックを起こし自滅していくのですが、そこには現在のホログラムやVRに通じる演出がなされています。