30 年間お世話になった平成も終わり、いよいよ新しい元号「令和」がはじまりました。

これをきっかけに、「日本の歴史」に目を向けた人も多いはず。

石ノ森作品には、全55 巻にもなる超大作『マンガ日本の歴史』をはじめ、日本最古の典籍をマンガ化した『古事記』も。

この改元というまたとないタイミングを利用して、日本の歴史をマンガで楽しむというのはいかがでしょう。

そして、そうこうしているうちに夏もやってきます。

少し長めの作品にじっくり浸るのも一興です。

発表から今年で55 年を迎える『サイボーグ009』を筆頭に、さまざまな人間模様が繰り広げられる『HOTEL』や、

『佐武と市捕物控』『さんだらぼっち』といった江戸情緒に触れる作品も。

お出かけ先で楽しむもよし、家でじっくり楽しむもよし。

さぁ、どれから読み始めましょうか!?

マンガ日本の歴史

 

石ノ森章太郎作品の中でも断トツで一番長い作品。
1989年から1993年の4年間に渡り、毎月200ページ描き下ろし単行本として全48巻が刊行、さらにその後「現代編」全7巻が追加され、全55巻で完結しました。
研究者による原案提供があったとはいえ、一人の作家が日本の全史に挑んだ前代未聞の作品です!
これを読破すれば旧石器時代から1993年までの日本の歴史がバッチリ学べます。
令和に変わるタイミングに読むなら、江戸時代が終わりを告げる42巻、明治の終わりを追った49巻50巻、そして大正から昭和の変貌を描いた52巻あたりを読んでみてはどうでしょうか。

HOTEL

 

『ビッグコミック』1984年9月25日号から1998年3月18日号に渡って長期連載され、ドラマでもおなじみの大ヒット作。
連載作品としては最長で、全325話、単行本で全30巻!
次から次へとテーマを変えて新しい作品を生み出し続けた石ノ森ですが、ここまで腰を据えてじっくりとひとつの舞台を描いたのは「HOTEL」だけ。
ホテル・プラトンを主役にした群像劇というスタイルで、様々な人間ドラマを描いてます。不倫、自殺、汚職、泥棒、締切に追われる作家、ポルノ映画撮影などが一挙に10階に集まって絡みあう第100話(10巻)、フロント一筋の赤川くんが営業に移動させられる第217話~第219話(21巻)、「HOTEL」版「ローマの休日」な第310話~311話(29巻)などなど印象的なエピソードも多く、基本一話完結スタイルなのでどこから読んでも楽しめます。
時代を江戸時代に移した「HOTELチョンマゲ版HATAGO<旅籠> 」全2巻というスピンオフもオススメ!

サイボーグ009

 

言わずと知れた石ノ森章太郎のライフワーク。
9人のサイボーグ戦士たちの闘いを描いた全27巻の中から、あまり「サイボーグ009」に触れた事がなかった人に、とりあえず読んでみて欲しい巻をピックアップ!
1巻→「誕生編」サイボーグ戦士たちがどうやって生み出され、どうして闘う宿命に身を投じたのか、全てはここから始まります。
5巻→「ミュートス・サイボーグ編」ギリシア神話の神々がモチーフとなったサイボーグ戦士たちと009たちがバトルする王道アクション!ロマンスのスパイスもかけられてます。
6巻7巻→「地下帝国〝ヨミ〟編」シリーズ屈指の名作と言われるエピソード。スケールの大きなバトル、敵の正体が明らかになっていくサスペンス、そして感動的なラスト。必読です!
18巻24巻→『週刊少年サンデー』で連載されたエピソードを主に集めた巻。
サイボーグ戦士たちの個々のエピソードが描かれる事が多く、闘いだけでなく日常生活なども語られているため、キャラクターたちに近づけるのが特徴。山手線に乗る009、誘拐される001、不良少女に誘惑される004、料理評論家に右往左往する006、失恋に泣く007など、我々となんら変わりがない彼らの姿を見ることができます。

佐武と市捕物控

 

1966年に『少年サンデー』でスタートした時は少年マンガのタッチで、その後1968年に『ビッグコミック』に移動してからは劇画タッチで描かれた、石ノ森時代劇の代表作。
古くからある捕物小説は〝季節の文学〟とも言われるようですが、「佐武と市捕物控」もまさしく〝季節の萬画〟といった趣で、江戸時代の季節や行事、風物詩、風俗などを感じられる作品になっています。
やはり一話完結で、全18巻。どこから読んでもらっても大丈夫です。
とは言え、読み応えのある、大人の時代推理物が読みたいという方はやはり『ビッグコミック』連載版をオススメ!ちなみに『少年サンデー』掲載版は1巻2巻、『ビッグコミック』掲載版は3巻15巻、読み切りで描かれた短編が1617巻18巻は短編に、似た匂いのする全7話の「墓文字屋さぶ」と全3話の「大江戸相撲列伝」を収録した江戸まとめの1冊になってます。

さんだらぼっち

 

1975年から1983年にかけて『ビッグコミック』などで描かれた江戸人情噺。全17巻。
吉原大門の外のおもちゃ屋で働きながら、吉原内の借金やトラブルを回収する始末屋も請け負う男が主人公。
男女のもつれに始まり、お金にまつわる問題、人情と無常のあれやこれ、様々な事件が持ち込まれては解決したりしなかったり。
大仰な話はなく、江戸に暮らす普通の人たちの日常が丁寧に描かれていて、時代劇の傑作と言う人も少なくありません。1巻から順にじっくり読んでいって、主人公のとんぼが、出戻りのお志摩さんとゆっくり恋仲になる様子を楽しんで下さい!

リュウの道

 

『週刊少年マガジン』にて1969年3月30日号から1970年12月20日号にかけて連載された全8巻の長編。
不時着したロケットの中で冷凍睡眠から覚めた少年・柴田リュウの旅を描いたSFで、ミュータントや猿人、怪物、ロボット、武士などが時空を超えて入り乱れ、最終的には〝神〟まで登場する、壮大なストーリーが展開されます。
「リュウ三部作」の第一作にあたり、このあと「原始少年リュウ」(全2巻)、「番長惑星」(全5巻)と続きます。三部作と言っても、主人公の名前が「リュウ」であるだけで話がつながっているわけではないので、どこから読んでも大丈夫!
石ノ森SFのスケールの大きさをぜひ感じとって下さい!