はじめに

2017年12月

 

『その人』は、僕が子供の頃から、決して子ども扱いせず、一人の人間として向き合い、何かあれば話を聞いてもらい、真摯に語りかけてくれました。僕が夢を描き、目指そうとする道に対しては一切反対をしませんでした。僕の少年時代に『その人』が一年に一度ほどの頻度で、言い続けてくれた言葉があります。「自分のやりたい事があれば、やりなさい。自分の好きな道を選びなさい。決して反対しないから―。ただ、その代わり、必ず自分で責任を取りなさい。大学までは面倒をみよう。だけど、大学を出たら、必ず一人で生きていきなさい」

「龍神沼」

2021年4月

萬画好きの方の中で、これほど有名な短編読み切り作品はないと思います。中には、この作品を石森章太郎の最高傑作と評する方がいるほど、非常にクオリティの高い作品です。これを、1961年に描いたというのですから驚きです。

「トキワ荘のチャルメラ」

2021年3月

やっぱり環境って、とても影響力のあるものですね。プロ野球の好きなチームがジャイアンツなのも、趣味が映画鑑賞と読書なのも、全て影響を受けるからだと思うのです。お酒は呑みますが、ずっと自分に晩酌の習慣がないのは、家がそうだったからに違いありません。夕ご飯は食べても、その後徹夜で仕事をするので、夕時にお酒を口にする姿を見たことがなかったからです。食の趣味もそうです。ラーメンが好きなのも間違いなくそうです。この思い出は特に強い。

「カラ公ものがたり」

2021年2月

石森の実弟にあたる弘幸さんから聞いた話です。子供の頃に、宮城県の実家でカラスを拾ってきたことがあって、こっそり飼っていたらしいのです。

「少年同盟」

2021年1月

僕が小学生の頃の話です。母方の祖母が、大の相撲好きで、その影響で僕も観るようになりました。その当時は、先代の貴ノ花関が人気絶頂で、祖母も応援しておりました。それに引っ張られるように、うちの家族たちも、自然に貴ノ花関を応援していたと思います。

「サイボーグ009 ベトナム編」

2020年12月

作品をエッセー風に解説して欲しいと依頼を受けまして、こうして書いているのですが、せっかくなら人に余り知られていない作品をご紹介したいと思っておりました。しかし、いきなりのビックタイトル(笑)ただ今回は、ベトナム編に限定させて頂きます。この辺が、ちょいとコアですが(笑)

「青いマン華鏡」

2020年11月

数多くの作品を描き、長編の傑作も数知れず、短編作品も当然の如く、心に残るものが多数存在致します。小説で例えるなら、私小説的な作品も、作者の作品郡をみると、決して少なくありません。そのような作品を並べてみると、やはり、故郷での出来事や、上京後のトキワ壮時代の話が多いような気がいたします。

「ロボット刑事」

2020年10月

テレビ番組の企画を同時進行で萬画連載することは、「仮面ライダー」が史上初だったそうです。その大ヒットで、石森章太郎という萬画家は、特撮ヒーロー界の作品にはなくてはならない原作者となりました。同じヒーローという枠で、作品毎に差別化を図るために、様々なアイデアの工夫が見られます。

「水色の星」

2020年9月

有名な作品にも触れたいと思いますが、どちらかというと、余り知られていない作品の方を紹介したいという気持ちも強く持っております。特に短編作品は、よほど石森作品が好きな人以外は、全く触れる機会がないかと思いますので、今回も、そういう作品を紹介したいと思います。

「写楽」

2020年8月

僕も何十と言う単位で戯曲を創作しておりますが、自分が好きな作品の一つに「ほろほろ」という、唯一の時代劇作品があります。しかし、もっと正確に言うと、現代と江戸時代を舞台にリンクしながら物語が進むので、完全な時代劇ではありません。むしろ例えるなら、ファンタジー作品です。

「きりとばらとほしと」

2020年7月

石森プロから「石森作品を追いながら、自分の感じたままのエッセーを連載しないか」と打診を受けまして、こうやって回を重ねておりますが、一つ一つ作品に触れていく事によって、僕が世界中のどの誰よりも尊敬してやまない石森と、こうして向き合える時間を頂けたようで、毎回とても嬉しく、ワクワクしながらキーボードを叩いております。

「変身忍者嵐」

2020年6月

役者も演技が歳を追うごとに変わっていくように、萬画家もそのタッチが変化していくようです。ちばてつや先生が、あるインタビューで「あの時描いた矢吹丈を、現在書けと言われても、全く同じタッチでは書けない」と言っておりました。

「夜は千の目をもっている」

2020年5月

萬画に限らず、小説でもそうですが、雑誌に掲載する場合、連載を続けていく長編作品と、短編の読み切り作品の2つの形態がございます。今回は、そのうちの読み切り作品にスポット当てたいと思います。

「ちゃんちきガッパ」

2020年4月

子供の頃は見向きもしなかったジャンルも、大人になると味わい深く楽しめるようになるものです。 そのうちの一つに、「時代劇」というジャンルの作品がございます。

「星の伝説アガルタ」

2020年3月

この作品は実に印象深い作品なのです。僕が小学生の時でした。直ぐご近所に丁度中学生のお姉さんがおりまして、「アガルタ」を連載している週刊少女コミックを愛読しておりました。ある日、僕のところまで来て、「あの後、どうなったか教えて」と聞いてきました。ある週のラストシーンの続きがどうしても知りたくて、翌週まで待てなかったようです。

「八百八町表裏 化粧師」

2020年1月

子供の頃は見向きもしなかったジャンルも、大人になると味わい深く楽しめるようになるものです。 そのうちの一つに、「時代劇」というジャンルの作品がございます。

「石森章太郎読切劇場」

2019年12月

一つのテーマで描く短編集と違って、好き勝手に自分の描きたいテーマを縛られることなく、読切で発表できる場はさぞかし楽しかったのではないでしょうか。

「サイボーグ009」

2019年9月

役者の世界では、“動物と子供には敵わない”という言葉があります。どんなに名優が頑張っても、動物か子供が登場したら、全部食われてしまうという意味ですー

「二級天使」

2019年8月

よく僕は石森にこう言われました。「才能は、1パーセントにすぎない、その99パーセントは努力なんだ」僕の胸には、幾つもの言葉が刻まれ、それを大切にしています。特にこれは、自分の人生観にも反映するくらい、影響力のある言葉でした。そんな事を想いながら、作者のデビュー作を久々に開いてみました。

「テレビ小僧」

2019年7月

自分は俳優をやっていますが、演劇をプロデュースして、作品も創っています。芸能の世界では、演技で最も難しいことは、人を笑わせること、とよく言います。泣かせることより、笑わせることの方が、余程難しいと。これは作品でもしかり、映画でも芝居でも、同じことが言えます。マンガの世界の事はよくわかりませんが、少なからず近い印象を僕は持ちます。

「トキワ荘物語」

2019年6月

マンガ好きな方には、最も有名なアパート名でしょう。マンガに精通していなくても、この名前を一度は耳にしたことがあるかと思います。 手塚先生がこのアパートで仕事をしていたので、編集の方がマンガ家の卵たちが田舎から上京する度に此処を紹介した事から、 若手マンガ家達が集い暮らすようになった処。

「さるとびエッちゃん」

2019年5月

この作品、週刊マーガレットの創刊号で、連載が始まりました。雑誌と共に、エッちゃんも産声を上げました。
創刊する少女マンガ誌にギャグマンガを描こうとする事は、とても勇気のいることだと思います。
やはりギャグマンガと言えば、少年誌が定番ですから。
でも、“実験無くして、進化無し”、何事にも挑戦する作者ならではのチャレンジだったと思います。
その挑戦が生んだ主人公は、マンガ史のなかでも稀有なほど、痛快で愛くるしい、人の心に残り続ける素晴らしいキャラクターなのです。

「人造人間キカイダー」

2018年2月

石森章太郎と言えば、『仮面ライダー』に代表されるヒーローものを連想される方が多いでしょう。
今こちらで、最初にヒーローものの作品の感想を書くのは、やはり『仮面ライダー』じゃないかとも思ったのですが、自分の趣向が、どちらかというと“反メジャー”なんですよ。映画でも、メジャー作品よりは、単館で上映しているようなアート系作品の良品を探すのが好きですし、演劇でも、大劇場の作品よりは、小劇場で作家性の強い作品を観るのが好きです。

章太郎の 「ファンタジーワールドジュン」

2018年3月

 「月刊COM」、1967年に虫プロ商事から創刊された雑誌です。作家性を重んじて、前衛的な実験が出来る場所だったと聞いています。そこで連載を始めたのが、「ファンタジーワールド ジュン」でした。

「佐武と市捕物控・隅田川物語」

2018年4月

 小学館の石森担当だった小西湧之助さんという編集の方がいらっしゃいます。
毎年正月には必ず家に訪れ、石森とは何時間も深くお酒を交わし合う仲です。
最後の入院の時、お見舞いに訪れて下さいまして、管に巻かれた石森の寝顔に向かって、「いろいろ、あったね」と一言、言葉を置いていかれました。

「佐武と市捕物控・狂い犬」

僕ら夫婦の結婚式の仲人をお願いしたくらい、懇意にさせて頂いている元小学館の小西湧之助さん。以前もご紹介させて頂きましたが、石森のためにビックコミックを創刊させた方です。漫画誌の世界に初めて大人が読むための雑誌を創った、言わば、マンガ業界に革命を起こした方です。

「リュウの道」

「よく最後まで連載を許してくれたね?」どうしても、この事が聞きたくて、石森が最後の入院時に、僕が尋ねた一言。それは、1969年から週刊少年マガジンで連載が始まった『リュウの道』のこと。

「星の子チョビン」

「僕にも二人の男の子がいて、育児にもなるべく積極的に参加をして育ててきました。子供たちと接して、初めて子供の目線で何を好むのかを理解出来たりします。この世に生まれて、まず最初に子供たちが好きになるキャラクターは、恐らく「アンパンマン」です。

「サイボーグ009 神々との闘い編」

「月刊COM」で、『ジュン』の後に連載した作品です。『ジュン』の事を知った後に、この作品に触れると、その系譜に頷きます。それは、作家性を重んじて、前衛的な実験が許された雑誌に、サイボーグ009という作品を書いたら、きっとこういう表現方法になるのかもれないな、という納得です。

「マンガ家入門」

誰でしたっけねぇ…確か、石森のお弟子だったか、他のマンガ家の方だったか…、いや、全くマンガとは無縁の方だったか…、とにかく複数の方に言われたんですよ。「この本で、みんな勘違いした」(笑)「先生は本当に罪な人だ」と、もちろん笑いながらですよ。文字だけ追っていくと、とても酷い言葉に聞こえますが、皆さん、一様に笑顔で僕に伝えます。

「幻魔大戦」

マンガが月刊誌本流だったのが、週刊誌が出始めて、マンガ家たちは時間に追われるようになりました。マンガ製作に分業という概念が生まれたのも、この頃だったと思います。ストーリーを創る人と、それを基にマンガを描く人。

「酔いどれ探偵鉄面クロス」

かつて、僕がレギュラー出演していたドラマで、『スケバン刑事』という作品がありました。マンガが原作ではありますが、石森作品ではありませんよ。和田慎二先生の作品。有り難いことに、斉藤由貴ちゃん主演のパート1、南野陽子ちゃん主演のパート2と両方に出演させて頂きました。その陽子ちゃん主演のスケバン刑事が、もともと鉄仮面を被っていたという設定だったんです。

『鉄面探偵ゲン』

これは、『酔いどれ探偵鉄面クロス』の続編にあたる作品です。設定は全く一緒ですし、主人公がタコの足を加えているのも一緒。ただ違うのは、クロスがヒーローもの作品だったのが、こちらは本格推理マンガになっている事です。それに、微妙ではありますが、絵のタッチも意識して少し大人っぽく書いているような気がいたします。

小野寺 丈 プロフィール

俳優として、15歳から初舞台を踏み、梅沢武生、梅沢富美男、浜木綿子、藤田まこと、左とん平、渡瀬恒彦など、多くの先輩俳優に師事し、影響を受け修行も積む。現在、シリアスも演じられる個性派の喜劇俳優として認められている。他に、三遊亭圓窓に師事し、「三流亭舞大」という名前を貰い、高座経験も持つ落語の腕前はセミプロと評されるほど。その落語も披露し、連作短編集の構成で演じる 自身のひとり芝居は、その構成の妙と数名を演じ分ける 演者としての幅の広さに、高い評価を得ている。

20歳で旗揚げし、途中10年間の充電期間はあるものの、プロデュースユニット JOE Companyの演劇活動は、ライフワークとして現在も継続中である。

演劇プロデューサーとしての評価もさることながら、脚本、演出をし創作する その作品は、SF、ファンタジー、コメディ、ミステリー、サスペンス、ラブストーリーとジャンルにとらわれない、自身にしか描けない作風。

何処にでもある日常に、非日常が絡むユニークな発想に引き込まれ、喜劇性豊かなストーリーに笑い、人間が持つ普遍的なテーマに感動し、緻密に練りこまれた構成と大胆な演出で表現される独自の世界に熱中するフリークが急増中。創作者としての評価も、作品を発表する度に登りつめている。