サイボーグ009 ReDesignプロジェクト

いつの時代も、新しく。

アジアに初めてオリンピックがやってきた1964年。そんな記念すべき年のデビュー以来、55年の年月を超えて愛され続ける『サイボーグ009』。いまでもさまざまなアーティストとのコラボ企画やリメイク作品、スピンオフなどがぞくぞくと生まれています。その一端をご紹介。われこそは!と思うアーティストやクリエイターの参加もお待ちしています!

サイボーグ009 イラストタッチの移り変わり

30年以上に渡り描かれてきたサイボーグ009のイラストタッチの移り変わりをご紹介。

【前期:1964~1967】
いかにも少年マンガらしく、主人公の009も子供っぽく描かれており、連載当時は服の色も緑のときがありました。

【中期:1967~1974】
石ノ森自身、少年漫画から青年漫画へ作品発表の場を広げた時期。そのような背景もあるからか、やや大人びたキャラクター描写も多くなりました。

【後期:1975~1997】
漫画の連載再開や、テレビアニメ放映・劇場版など、当時サイボーグ009が様々な展開を行っていた時期から晩年の頃には、様々なタッチや手法によるサイボーグ009が描かれていました。

リデザインクリエイター インタビュー

童画家:徳治昭

徳治昭童画館 代表
1968年生まれ/大阪府在住
フリーイラストレーター・童画家
日本児童出版美術家連盟会員
奈良芸術短期大学洋画科卒

サイボーグ009ReDesignプロジェクト特別インタビュー「徳 治昭」

石ノ森萬画で育った世代だから、
不安より楽しさが先行しちゃいました。

先生の故郷での出会いからスタート

⽯森プロ(以下、⽯):どのような形で、今回のリデザイン(作家さんのテイストで描き起こす)をしていただくことになったのか、その経緯を教えていただけますか?

徳治昭さん(以下、徳): 2018年に⽯ノ森章太郎先⽣の故郷である宮城県登⽶市で展覧会を開催しました。その時に訪れた⽯ノ森章太郎ふるさと記念館で⽯森プロの⽅に絵を観て頂き、とても好評でしたので、これは是⾮僕のタッチの⽯ノ森キャラクター達の童画を観ていただきたいと思い、地元⼤阪に帰ったあとすぐに「⼿のり009」を描いて⽯森プロに観ていただいたことがきっかけです。

⽯:最初に「009」をリデザインすると伝えられた際、どう思われましたか?

徳:やはり⽯ノ森萬画で育った世代ですから、「サイボーグ009」は全巻持っていますし、何より嬉しさが先でした(笑)⾃分のテイストでどれだけ表現できるか不安よりも楽しさがこみ上げてきました。

主人公をあえて「陰」のイメージに

⽯:制作にあたり、関係者間ではどんなやりとりがなされましたか?

徳:⽯森プロの皆さんは、僕の作⾵、世界観をとても理解して頂き、ただのデフォルメでないものを観たいとおっしゃって頂いたので、プレッシャーはありましたが、より深く⾃分らしさを失わないように⼼がけました。

⽯:実際に制作作業を進める中で、どういう点が難しかったですか?逆に、思ったよりも上⼿くいった、と感じられたところはありますか?

徳:009、島村ジョーは主⼈公ですが、どこか淋しげな顔をしているのでその雰囲気を失わないようにどうすればいいのかをとても考えました。結果、主役はどちらかというと「陽」「昼」「太陽」で表現しがちですが、あえて「陰」「夜」「⽉」で表現してみました。対⽐として003、フランソワーズ・アルヌールを「陽」にしたので、結果的に良かったかなと思っています。

先生の仕事に創作意欲が

⽯:⽯ノ森作品で好きな作品はありますか?その作品との出会いのきっかけ、好きなポイントなどもあれば教えてください。

徳:「番⻑惑星」が好きでした。昔は過去の萬画が⼿に⼊りにくくて、古本屋さんを巡るのが⽇課でした。そこでセットで購⼊した覚えがあります。パラレルワールドという聞き慣れない世界をこの萬画で初めて知りました。また、近年「ジュン」の原画展を観て、改めてその世界観、発想⼒に圧倒され制作の意欲が湧いてきました。

徳 治昭(とく はるあき)プロフィール
徳治昭童画館 代表
1968年生まれ/大阪府在住
フリーイラストレーター・童画家
日本児童出版美術家連盟会員
奈良芸術短期大学洋画科卒

徳 治昭(とく はるあき)プロフィール
大阪府在住。童画家・イラストレーター
童画家として、独特のテクスチャーで重厚でかわいらしい童画を発表。
全国で展覧会を開催。イラストレーターとして、宝くじデザイン・出版・広告・キャラクターデザイン等手がける。ほっこり・かわいい童画で皆さんのココロを癒します

徳治昭童画館

https://dougakan.net/

株式会社METALBOX イラストレーター「あいじぇ」

サイボーグ009ReDesignプロジェクト特別インタビュー「あいじぇ」

一番のお気に入りはフランソワーズちゃん。
イワンは大人になったらきっとイケメンですよね(笑)。

なんてバラエティーに溢れたチームなんだろう

石森プロ(以下 石):どのような形で、今回のリデザイン(作家さんのテイストで描き起こす)をしていただくことになったのか、その経緯を教えていただけますか?

あいじぇ(以下 あ):会社(METALBOX)での商品展開中のグッズ開発の中で、どんな風に自分の絵柄に落とし込めるかの練習を兼ねて、世代的にリアルタイムでは観られなかった70~80年代の作品も含めて古今東西いろいろなキャラクターを描いていました。
そんな時、サイボーグ009を描いてみない?と企画開発部の先輩からアドバイスがありました。
恥ずかしながら原作を拝見したことがなかったのですが、子供のころにアニメ「サイボーグ009 THE CYBORG SOLDIER」は何度か見たことがあったのでとても興味がわき、ぜひ挑戦してみたい!と思いました。

石:最初に「009」をリデザインすると伝えられた際、どう思われましたか?

あ:リデザインをするにあたって「サイボーグ009」をいろいろ調べるきっかけになりました。
リアルタイムに見たはずの映像の記憶があまりなく作品を深く知らないということもあり不安もありましたが、資料やデザインを見直してみると主人公たちゼロゼロナンバーサイボーグは、かっこいい人、かわいい人、面白い人(?)など、デザインの幅が広いし、年齢や人種などもいろいろで、なんてバラエティーに溢れたチームなんだろうと(笑)
石ノ森章太郎先生はこんな漫画を50年以上前に発表されていたなんて改めて驚きました。

石:デザイン制作にあたり、御社内ではどんなやりとりがなされましたか?

あ:もともとフワフワした動物とかを描くのが得意でしたが、いろんな人物を似せて描く機会はいままであまりありませんでした。
私の絵柄でラフを描いては、どこを直せばそのキャラクターの特徴を捉えられるか、どうすればもっと似せてそのキャラクターだと分かってもらうことができるかの繰り返しでした。
外見の見た目もそうなのですが、そのキャラクターの生い立ちや性格なども詳しい人に教えてもらっているうちに少しでも009らしくすることができたのではないかと思います。

石:実際に制作作業を進める中で、どういう点が難しかったですか?

あ:やはりマンガやアニメ本編のキャラクターとは等身や顔の描き方が全く違う中で、どこまでキャラクターの雰囲気を残して描けるかというところが難しかったです。
個人的には、フランソワーズちゃんが一番苦労したんじゃないかと思っています。
紅一点で可憐で儚げな少女のような外見なのに、芯の通った強い意志や時には母性を感じさせてくれる魅力あふれるキャラクターですよね。
それをデフォルメにしてって言われたので、どうやって?って思いました(笑)

石:逆に、思ったよりも上手くいった、と感じられたところはありますか?

あ:一番難しいだろうなぁと思っていたジェロニモやピュンマが、意外と安産で自分の絵柄にマッチしてくれて描きやすかったところです。
少し調子に乗ってピュンマの隣に魚を描いたりとかするくらいノッて描くことができました。
会社の先輩にキャラだけでいいよって言われたので消しましたけど(笑)

作品の中で「生きている人物」

石:石ノ森作品で好きな作品はありますか?
その作品との出会いのきっかけ、好きなポイントなどもあれば教えてください。

あ:やはりサイボーグ009が好きです。
それぞれの個別のエピソードがたくさんあるところが好きです。
キャラクターの人生に深みが出て、感情移入してしまいます。
あと、物語として清廉潔白な正義と悪の対峙というだけでなく、悪の組織で得た力を人類や正義の為に行使するというようなストーリーに人間の心の強さというかドラマを感じます。
それは石ノ森章太郎先生の仮面ライダーや人造人間キカイダーとかの作品にも通じるところがあるようにも思います。

石:「サイボーグ009」の中で、一番お気に入りのキャラは誰でしょうか?
またその理由を教えてください。

あ:苦労したからというわけでもないのですが、一番はフランソワーズちゃんですね。
何度も描き直しているうちにどんどん愛着がわいてきました。
練習で、勝手に3頭身プロポーションのフランソワーズちゃんとかも何パターンか描いちゃったくらいです。
あと、イワン。赤ちゃんだけど、大きくなれたらきっとイケメンですよね(笑)
それから、ヘレナ!まだ仕事で描く機会は巡ってきていませんが、趣味どまんなかのキャラクターです!

石:この作業を通じて、あいじぇさんの中で石ノ森キャラクターの印象が変わったりしましたか?

あ:石ノ森章太郎先生の描く作品は、「悪と戦う強いヒーロー」というイメージでした。
今回、サイボーグ009のキャラクターを描かせていただく機会があって、自分なりにいろいろな作品を読んだり調べたりしていくうちに、苦悩したり葛藤したりするヒーローだったことを知ることで、ある意味「とても人間くさい」と言うか、単純に作られた正義を演じているキャラクターというわけではなく、作品の中で「生きている人物」と感じるようになりました。

ヘレナとアポロンの姉弟をぜひ(笑)

石:商品デザインを告知したときの手応え・反応、評判など、
あいじぇさんのほうで見たり聞いたり、感じたものはありますか?

あ:サイボーグ009は50年以上ファンの方々に愛され続ける作品でもありますし、私のアレンジしたデフォルメイラストを受け入れてもらえるものか不安は大きかったです。
昨年、大阪や東京で開催されたイベントや石ノ森萬画館さんでたくさんの方にグッズを手にしていただいていると聞きホッとしています。
また、SNSなどで応援を頂いているとも聞きました。
サイボーグ009のキャラクターたちを描かせていただいて本当に良かったーと思いました。
今後もデフォルメのぷちサイボーグたちのいろんな表情やポーズを描いていきたいと思います。

石:今後、石ノ森作品の中で商品化したいキャラクターと、アイテムがあれば教えてください。

あ:まずは、ヘレナとアポロンの姉弟をぜひ描いてみたいです!
ぜひお願いします!描かせてください!(笑)
私自身が不勉強なものでまだまだ知らない作品もあります。
これからもいっぱい石ノ森章太郎先生の作品を読ませていただいて、このキャラクターを商品化しましょう!って会社の企画会議で私からもどんどん提案していきたいと思います。

石:ありがとうございました。

●あいじぇプロフィール
2017年より株式会社METALBOXに所属。
個人作家活動などを行なっていたなかで、同社企画開発部のイラストレーターとして参加する。