「酔いどれ探偵鉄面クロス 第1回」

かつて、僕がレギュラー出演していたドラマで、『スケバン刑事』という作品がありました。マンガが原作ではありますが、石森作品ではありませんよ。和田慎二先生の作品。有り難いことに、斉藤由貴ちゃん主演のパート1、南野陽子ちゃん主演のパート2と両方に出演させて頂きました。その陽子ちゃん主演のスケバン刑事が、もともと鉄仮面を被っていたという設定だったんです。副題が「少女鉄仮面伝説」、やはりマンガ原作ならではの奇抜な設定だと思います。

当時、そのシチュエーションを聞いて、すぐに思い浮かんだのが、石森の原作である『鉄面探偵ゲン』でした。後からの連載だったせいか、そのタイトルの方が馴染み深いのですが、その前身が『酔いどれ探偵鉄面クロス』という作品。やはりタイトルとしては、くどいですね(笑)。「酔いどれ」「探偵」「鉄面」のうえに「クロス」ですから(笑)。4ワードも入っています。

この作品は、1974年と75年に週刊少年マガジンと別冊少年マガジンの読み切りマンガとして発表されたものです。鉄面クロスと名乗る鉄仮面を装着した犯罪人の身代わりとして、元刑事が無理矢理装着されたことが発端で、鉄面姿となる。個人的な好みでいえば、この鉄面姿にならざるを得ない何か深い理由があった方がドラマチックだったかと、最初読み始めて、そんなことを漠然と感じました。ただ読み進めていくうちに、そんな理由より、もっと大事なことがテーマだという事に気付かされます。かつて思いを寄せていた、自分の武道の師匠の娘から、仮面の上に装着する、自分の顔を形どったマスクを渡されるのですが。その時彼女がこんな言葉を投げ掛けます。「仮面の下に、本当の顔を隠して暮らしているのは、貴方だけじゃない」と。その言葉を聞くと、まさに苦悩を抱えながらも闘う、ただ明るいだけの完全無欠のヒーローではない、石森イズムを感じてならないのです。

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