特集 石ノ森章太郎の「ことば」たち 1

萬画家・石ノ森章太郎は、770タイトルを数える作品群の中で、登場人物に数多くの名言を語らせた。しかし、自らもさまざまなインタビューや著作でキラリと輝く「ことば」を多く遺している。

そのいくつかにスポットを当ててみよう。この出会いが、今後の人生の道標になるかもしれない。また、最後に一昨年惜しまれつつ亡くなったマーベル・コミック隆盛の立役者スタン・リー氏との1978年の対談を再掲!ぜひご一読を!

<経済>

高度経済成長は一つの経済戦争だ

高度経済成長というは一つの経済戦争で、精神的には同じような荒廃をもたらしたことに気がつく。つまり昭和二十年に終戦ですべてを失ったと同じ状況がいままさにあるのではないかというのだ。あのときだって焼け野原を前にみんな茫然としていた。なんとか立ち上がり、とにかくこの焼け野原に家を建てて、子どもたちにおなかいっぱい食べさせたいと願った。

家を建てるには木がいる。高度経済成長時代、僕らはひたすら目の前の木を切り倒し、家を建てビルを建ててきた。しかし一方で、木を植え森を育てることを忘れていたのかもしれない。その荒廃のツケで今、茫然という洪水に襲われている。そんな感じがする。(※1)

章太郎少年が小学校に入学した昭和20年の8月に終戦を迎えた日本は、そこから奇跡とも言われる経済成長を見せる。しかし一方で公害問題や拝金主義など負の部分も多く生み、21世紀が進むうちに世界同時とも言えるタイミングで大きな社会問題にもなっている。

※1=不肖の息子から不肖の息子たちへ 絆/NTT出版 鳥影社
※2=学習研究社「高1コース」1979年
※3=「風のように」